2008年11月アーカイブ

 幾度書いたか知れないが、とにかくこのギャラリーは三つの教会に接している。プロテスタントのヨハネ教会、ロシア正教のハリストス正教会にカトリック教会だ。店主の人格にまで作用した風はいまのところないけれど、鳴り渡る鐘の音に耳を澄ませば神妙かつ自省的な気分になってくる。
 例年この時期のギャラリーはクリスマスにちなんだ作品が集まる。ここで作品展を持った作家たちが、鐘の鳴り響く元町を思い出し製作した作品たちが届くのだ。印刷された紙切ればかりをアリガタがったその結果辿り着いたのが地獄の3丁目...という現代、手のワザと汗と愛情とで仕上げる「モノ」の持つチカラにぜひ触れて頂きたい。


「元町で育ったクリスマスの工芸品展」
12月25日まで
10:00open/19:00close
水曜定休


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 空から降る雨雪が地下深く浸潤する。それがマグマに触れて高圧蒸気となるわけだが、それを探り当て地上に導き発電タービンを回すと5万キロワットの電気が生産される、そう説明された。先週の定休日、森町濁川地熱発電所見物では究極のサステイナビリテイを間近に見た思いがした。
 今週の定休日は知内町探訪だった。小雪舞う津軽海峡を左に眺め、ワーグナーなど聴きつつ一時間ほど走るとそこが知内町だ。ここから左折してさらに海沿い絶壁の道を走ると小谷石という集落に辿り着く。ここで道路は行き止まりになるのだが、自然の要塞が強敵道路行政を撃退してきた地でもある。この先には、ウニやアワビもだがヒグマやモモンガや岩魚やマムシたちが太古の昔から進歩と無縁で過ごしてる希少な聖域なのである。
 知内町湯の里地区というのがある。名が示すとうり温泉が湧出し、今も一軒だけ残る温泉宿には知内温泉と表示されていた。800年の歴史を誇る北海道最古の温泉だそうだ。名湯の効能や由来などに目をやり、地下深くから湧き出す湯に肩まで浸かり静かに目を閉じると地熱発電所が思い出され、自前の体内発電機が動き始めた気がした。


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 画像は元町配水場の桜だ。遠く横津岳や駒ヶ岳山頂には降雪があり、こちら北の開港都市函館も晩秋から初冬に一歩踏み込んだ。
 大病から帰還した知人の工芸家が、この季節、つまり冬に近い晩秋のこうした静かな佇まいが大好きだと語っていた。いわれて眺めてみると、美しくて潔い諦念といった気配が漂い伝わり素直に納得できた。楓、漆、銀杏やカラ松など落葉樹はどれも美しいけれど、なかでも桜が好きだ。その桜だが、見事な花を披露する木は紅葉もまた豪華である。


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 函館からなら車で約1時間、噴火湾沿いの国道から左折して幾重かに曲がりくねった峠道を走るとそこが森町濁川だ。周囲が山に囲まれた盆地で、典型的なカルデラ構造である。集落らしき部分もあるが、7軒の温泉や地熱利用のビニールハウスや水田などがのんびりおだやか、まるで隠れ里の様に散在する。立ち寄った森地熱発電所の担当者に説明を受けたのだが、ここは土砂が噴火口を埋めて出来た土地なわけで、炭火コンロの上の網ワタシというイメージも湧いてくる。
 地熱発電だが、積もった雪や降った雨が地下深くに浸透しマグマに触れて加熱され、高温高圧状態で地熱貯留槽に大量に蓄積されてるそうだ。そこに3千数百メートルの金属パイプを打ち込み、蒸気と熱水を地上に取り出しこれをエネルギーにして発電機を回転させる仕組みだ。そして使用済みの廃水だが還元井で再び地中深く戻され、これもやがてまたマグマに触れて加熱加圧されて...、と、H2Oは固体になったり液体になったり気体になったりしつつ、地下のマグマが存在する限り幾度も発電作業を助ける事になるのだ。
 こうした地質工学的な仕掛けを頭の中で思い描くととても平穏な気持ちになる。カネがカネを生むという詐欺行為を金融工学と称して無反省にむさぼり食った資本主義、そうして作り上げた借金にまた借金を重ねて気が付けば天文学的な底なし地獄にはまり込んでしまった人類、その一人であるけれどしかし少しだけ救われた気分が湧いてくる。

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 このところ快晴無風、おだやかな毎日が続いてる。枝から離れた銀杏や桜の枯葉などまっすぐそのまま地上に着地する。今日もそうなのだが、昨日の定休日もそうだった。
 これはそんな昨日のはなしだ。店主は函館の隣まち北斗市のある寺を訪ねた。実は土方歳三が秘かに葬られた寺があるという、誠に聞き捨てならぬ情報に接したのだ。新撰組副長として名を馳せ、五稜郭戦争で壮絶な討ち死にを遂げた土方だが、その眉目秀麗な一枚のポートレートのせいもあり今でも大変な人気者である。事実であれば全国から"歳さま詣"で沸き立つであろうこと間違いない。
 司馬遼太郎"燃えよ剣"では、武士時代の終焉を悟った土方は部下数名を従えて新政府軍陣地に切り込むが、函館市若松町、かって一本木と呼ばれた場所で敵の銃弾に倒れる。しかしその後がわからない。誰かが敵の手に渡してなるものかと運び去ったであろうが、その遺体がどこに運ばれ埋められたかが未だ解っていないのだ。
 聞いた情報によれば、土方に続いた一人がこの寺に縁のある剣の達人、彼が秘かにこの寺まで運び埋葬したというのだ。近くである峠下や中山峠でも土方は獅子奮迅の活躍した歴史事実もあり、これはありうる話に思える。
 あいにく住職は留守、そこで妻女と思われる方に訊ねたのだが「ここは200年の歴史ある寺ですが、そんな話しは聞いたこともありません...」と言下に否定された。旧幕軍やその協力者、内通者に対する新政府軍による血の粛清があったわけで、女性のそのあまりにもきっぱりとした言葉と態度に、「他言は無用ゾ、おのおの方!」といった言い伝えが今も連綿と続いてるらしい気配も...。墓地を歩いてみたら刻字も苔に埋もれて読み取れない古びた石碑もアチコチあって、そこらからもなんだか土方さんの声が聞こえてきそうで...。


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 公会堂前庭が美しい。木々が紅葉して絢爛豪華だ。銀杏の緑が黄金色に変わる姿に心引かれるし、快晴無風、朝の光を受けた楓の黄や朱赤がそこに加わり、もう「見事!」のひとことに尽きる。

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 ここに書き記したいことは沢山ある。テニスやヤマメ釣りやギャラリー前の道路工事や弥生小学校に関する事など、伝えたい話題は山ほどある。またテニス話題か...という方も多いだろうが、遠く離れて今の函館の天候や街の景気や行政の誠実さ加減?などに関心を有する人は少なくない。ささやかなページだが、店主はお訪ねいただく方たちの気持ちに日々応えたいと思ってる。だが、このところどうにも筆が、というか、キーボードが進まなく「書かなくちゃならない、しかし書けない」と正直いって困っている。
 その主たる原因はアメリカ発の金融危機問題だ。それで付け焼き刃で経済学に没頭してるのだ。ギャラリー店主如きが心配してどうなるものではないが、しかしこの世界規模の経済問題は何とも重くのしかかり気分が滅入る。跳ね返そうと試みても、がんじがらめに取り込まれ、出口無しの迷路で嘆き悲しむ我が身を知らされるるばかりだ。まさかメリルリンチやリーマンブラザーズの金庫とギャラリーの金庫が繋がってるとは思いもしなかった。
 今や、アメリカの問題はアメリカが解決すればよい...ではすまない。ジェット旅客機や国際会議やインターネットや条約や核兵器や恫喝などで世界は一元化され、質は量に還元されて数値だけが世界共通語になり、多様で豊かだった世界が消え、虚が実と入れ替わり、持続不可能なとんでもない世界になってしまった...などと毎日ぼんやり考えていた。そして久し振りに見上げたらもう函館山はこんな具合になっていたのである。
 だがしかし、これは合理主義や経済効率最優先の時代が終ったという事ではないのか。速度計の精度や銀行残高を誇っても何の役にたたないそんな新しい時代の幕が開くのかもしれないではないか。我々は暗黒の時代を見送り、新しい時代の夜明けを迎えてるのかもしれない...と考えたら勇気が出てきた。


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 ヘリコプターが空に、そして元町では広場や各辻ごとに大勢耳にイアホン装備警察官の姿が見える。報道によると今日は駐日ロシア大使函館訪問の日らしい。地政学的にも函館とロシアは因縁浅からぬところがあり、この地にはニコライ、ゴローニン、ベレンコなど世界史的な名前がいくつも登場する。谷村志穂さんの力作「黒髪」にも描かれてるけれど、長崎がオランダ風味なら函館の隠し味はたしかにロシアなのである。 

 われわれは政治経済に振り回され国家レベルで好きの嫌いの言ってしまうけれども、市民、国民としてなら皆良き隣人だ。たしかに「人類はみな兄弟」なのだ。店主知人のロシア人セルゲイもタギールもエレーナも皆んなとても聡明でシャイで愉快な友人で、つくづく国家という存在の必要性を考えてしまう。 

 ロシア正教会の入り口にも若い警官が立っていた。役務だから...でも寒いなあ...という顔だった。落葉した木の間越しに一粒の雪が舞った.

...と書いたけれど、その後ギャラリーにやって来たF島クンやKB田さんの話しを聞くとその警備振りは尋常で無く、空港から元町にいたるまで隙間無く黒ずくめに埋め尽くされてたらしい。そして配達された夕刊をみて、やって来たのが大使でなく外相だとわかった。北海道知事も駆けつけたそうで、まあ一大事ではあったらしい。 


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