2009年4月アーカイブ

 「江差の五月は江戸にもない」...というフレーズをここで毎年書き続けてきた。日本海がおだやかになるこの時期、かって北を目指した多くの北前船が競うように入港したのだろうし、またニシンの群来が押し寄せたのもこの時期だ。日本海が日本列島の経済流通の大動脈だったころ、その北のターミナル江差では未曾有の繁栄が長く続いたのである。そうした事実の先に江差塗り工房が活動してるわけで、その作品展にはこのフレーズが欠かせない。
 函館から車で二時間弱、通勤するにはムリという程の位置に江差町はある。店主も姥神まつりを中心に年に幾度か訪ねるのだが、行くたびに心に豊かなモノがジ〜ンワリ沸き立つ。行きにはいつもなにか期待が、そして帰途にはなにやら未練や心残りといったものが生じるそんな地方の魅力的な小都市なのである。
 人々の歓びや悲しみを見続けてきたのが古民家だ。歴史的環境を形作る大事な要素で、歴史であると同時にまちの個性そのものだ。しかしそうした建物もやむを得ぬ事情で解体される事だってある。江差塗り工房の人たちにとって、そうした歴史に磨き込まれた民家の一部だった古材、梁や柱が創作のための有り難い力になる。かっての大工たちが切ったり挽いたり穿ったりし、建物として機能して数百年、時代の空気をたっぷり吸い込んだ古材が現代の工人たちによって椅子やテーブルに姿を変えるのである。
 古材は現代に蘇る。別な機能として姿を変えるのだが、その組み立てが済むとすべて漆仕上げ、それも丁寧な拭きうるし加工が施される。漆は日本の伝統のワザだ。その底深い輝きはまさに陰影礼賛、現代人が24時間営業蛍光灯照明ですっかり見失った「美」がそこに姿を現す。
 今我が国の素材漆はほとんどが輸入物なのだが、工房では山を手に入れ毎年漆樹を植樹している。すべてを自給しようというわけだ。しかし、昨年の豪雨で漆の森の取り付け道路が決壊、修復に結構な投資をしてしまいましたと明るく笑っていたけれど、ゼネコンなど見向きもしない道路工事には地域のジサマたちが日当を有り難く頂きながら地域保全に汗したはず。
 店主はこうして毎年、江差塗り工房の新作たちを身近に見てきた。年ごとに完成度が高まってるのは当然だが、江差という魅力的な都市の過去と現在、そして「好ましい未来を夢見る幸福な仕組み」をみてきたわけでもある。

江差塗り工房新作展"新しくなった古さ"は今月末まで開催
10:00open/19:00close
五月はときおり休みつつ働きます
DSC_0104s.jpg

 大沼の松田牧場を訪ねてきた。馬と蛇とネズミという妙な組み合わせだったが、その年代物掛け軸の修理再生を依頼され、この度立派な桐箱に収って無事納品と相成った次第。牧場主は現在75歳。お会いするのはこれで二度目なのだが、言葉に力があり、天にも昇れば地深く潜りもする氏の会話からはなかなかな半生を送った人物と推察される。
 ギャラリー店主の仕事が恙なく終ると、牧場案内に誘われた。洗車とかワックス掛けとは無縁で過ごしたらしい四輪駆動車に乗り込み、前日降ったという30センチほどの積雪を踏んで次第に高原へと進んだのだが広さはおよそ220ヘクタールという広大な牧場に、乳牛100頭肉牛30頭それに道産馬25頭を育ててるという。遠く駒ヶ岳を背景に15,6頭の道産馬が固まっていたが、牧場主が呼ぶとゆっくり近づき、傍で見る彼らの平和な表情に、人と馬とが無理なく神話時代のおおらかさで過ごしてる様子が見て取れた。まるで工場の様にすべてを経済性からだけで管理された、名前ばかり「牧場」が氾濫してる昨今、動物のためでありひいては人のためでもある正当な牧場に出会った気がした。
IMG_4529.jpg

 横浜在住K島さんのご協力で実現した林さんの初作品展。素材としてのステンレスや銅、あるいは銀の針金をペンチとニッパーを使用して創作した「立体線描」である。天井から下げられたり、あるいは木製台座に乗ってゆらゆら揺れるモビールや、あるいはペンダントトップなどのアクセサリーやオブジェ風など作品は多彩だ。
 作品のどれもがガラス玉との組み合わせになっていて、例えばカエルなら緑のガラスだったり、イルカのブルー、金魚の赤など素材と色彩との組み合わせが絶妙、モチーフの持つその存在感が見事に膨らみなかなか優れた表現者だと素直に感心する。いつもは作者が制作過程を面前でパフォーマンスしてくれるとのことだが、この度はあいにく作品だけ。いつの日にか作家本人においで頂き、一本の針金が魔法のようにスルスルと線描されるところを拝見したいものだ。店主このところの悪性感冒で半死半生、ご紹介がすっかり遅れてしまったが、残念にも会期は28日まで。
IMG_4511.jpg

 これは昨日のこと。陽気に誘われて檜山地方を周遊してきた。主目的は江差の漆工房だが、ついでに食材探しというのもひとつあった。函館ではこの4月19日、バル街11thが開催され、ギャラリー会場でも提供できるピンチョ素材を探しているのである。
 無能なギャラリー店主に出来る事と言えば、カップ麺に湯を注ぐことくらいで、世界料理学会を主催するシェフの知遇を得る身としては笑い事ですむ話ではない。高価な牛肉をいただいて、塩こしょうふりかけ、レアとかウエルダンとかやったりするが、しかしこうした肉焼きだって実は特殊才能が必要だとか、練習して上達するという類のものではないらしい。いつも炭火前で活躍してくれる椴法華"サーフサイド"川口さんは飲み歩くのに専念とかで出動不可、なんとも心細い状態なのだ。新鮮エビを炭火で焼くのなら出来るかなと思ったのだが、しかし残念にもこれが今期最後の収穫ですと漁師の奥様に言われてしまった。
IMG_4423.jpg

IMG_4320.jpg 小樽市天狗山にアトリエを構え、たいへん意欲的に作家活動を続けてる"たかたのりこ"さんの作品展を開催中だ。どこか英国の香りが漂い、ウオーターカラーで描かれた花や植物画は緻密で繊細、優れた観察眼と表現力に驚かされる。目をこらすと小さな蜂やトンボ、妖精が描き込まれていたりするのである。
 たかたさんにはまた異なった作風がある。北海道の深い森に住むらしき背中に羽の生えた男の子や女の子たちだ。素直にかわいいく、妙に大人びた子供たちに辟易してるらしい年配女性達にとても人気だ。たかたさんの描いた、雪の結晶がデザインされた郵便切手や年賀状も出回ってるし、来年2月にはここで"雪"をモチーフにした新作シリーズをみせてくれる事になっている。
 石戸谷さんのステンドグラスはガラス壁面だし、たかたさんは壁面と展示台と両者は棲み分けして展示。一緒に楽しむことが出来る。
 こちらの展示は4月14日まで...
IMG_4395.jpg


 おなじみのステンドグラス作家・石戸谷さんの新作展、テーマは「Peace」。ウサギや猫、犬、かえる、カニ、きりん達がみなさまに届けるIMG_4383.jpgピースサイン!






















石戸谷 準のステンドグラス展「Peace」
5月15日まで 10:00open/19:00close