大沼の松田牧場を訪ねてきた。馬と蛇とネズミという妙な組み合わせだったが、その年代物掛け軸の修理再生を依頼され、この度立派な桐箱に収って無事納品と相成った次第。牧場主は現在75歳。お会いするのはこれで二度目なのだが、言葉に力があり、天にも昇れば地深く潜りもする氏の会話からはなかなかな半生を送った人物と推察される。
ギャラリー店主の仕事が恙なく終ると、牧場案内に誘われた。洗車とかワックス掛けとは無縁で過ごしたらしい四輪駆動車に乗り込み、前日降ったという30センチほどの積雪を踏んで次第に高原へと進んだのだが広さはおよそ220ヘクタールという広大な牧場に、乳牛100頭肉牛30頭それに道産馬25頭を育ててるという。遠く駒ヶ岳を背景に15,6頭の道産馬が固まっていたが、牧場主が呼ぶとゆっくり近づき、傍で見る彼らの平和な表情に、人と馬とが無理なく神話時代のおおらかさで過ごしてる様子が見て取れた。まるで工場の様にすべてを経済性からだけで管理された、名前ばかり「牧場」が氾濫してる昨今、動物のためでありひいては人のためでもある正当な牧場に出会った気がした。


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