二度寝してしまい戦場からの電話で起こされた。ラケット抱えてコートに駆けつけ、やっと四人揃いの即実戦と相成った。本日また快晴無風の絶好テニス日和で、こんな朝には原発事故もTPPも、欧米や日本の経済危機すらしばし忘れる事が出来る。
こういう日には雪虫が発生する。アブラムシの化身らしい彼らも、快晴無風に誘われてとど松の根元や降り積もった落ち葉の下から這い出すのだとか。静かでエレガントで、何だか海中を浮遊するプランクトンみたいでもある。木立の影を背景に逆光を受けて舞い漂うおびただしい数のそれは、太古から連綿と現れ、そして消えゆく夢幻の様だ。
冷えた成層圏大気のせいだろう、このところこの時間、ジェットストリームが青空を切り裂くのが見える。いつも北から南へで、きっと千歳発羽田行きの一番機だろう。小さく見えるが意外に大型の旅客機で、後部から鮮やかな白線を吐き出しなら函館山の向こう側に消えて行く。
雪虫を数えたり飛行機雲を眺めたりと、なかなか試合に集中できない。とうとう試合は完敗だ。しかし空飛ぶ彼らのおかげで、ある事に思いが至る。昔ながらなのは雪虫ばかりではなく、象だってキリンだってそうだし、モミジや蔦だって昔のままだ。チーターがストップウオッチ片手に、特訓に次ぐ特訓をかさね「今日のオレは昨日のオレじゃないさ!」と自慢したりするだろうか。「ヒトが手がけたもの以外は全て太古のまま」だとあらためて気がついた。とすると、ヒトだけが速さや効率や経済性を追求する「進化する種」と言う事になる。ダーウインに聞いてみたいものだが、変わらぬままの世界のなかで「変わる事」をし続けてるのが人類で、それこそが不幸の始まりではなかったか...。